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:: 猫算用

 本日非番を口実にいい大人が平日の真ッ昼間から裂きスルメ片手に茶碗で一杯。いやあ世の中に酒ほど楽はなかりけりなんて言葉も口をついて出ようもの、ご機嫌でスルメひとかじりのサターンの、その傍らにひょいと出ました猫一匹。……いよお、どうしたプルートさん。

「あのねサターン、ちょっと算数教えて」

 算数? と覗き込めば相手の腕の中には算数ドリル。仕様上人よりちょいと頭の軽いこのネコ坊主、どうやら近頃お勉強とやらを始めた模様。それなら手伝うにやぶさかじゃないやな、どれちょっと見せてみな。ドリルを開いて見れば中身は4÷2=( )、20÷5=( )、なんだ割り算じゃねえか、それじゃ一つ分かりやすいように言うとだ。とばかりに、手元のスルメ片手に講釈。

「ここにスルメ4本あるんだが、これを俺とお前で分けたいときはどうするね」

 セオリーの基本のキをそのままなぞってサターンが渡すスルメ4本。それをこれまたセオリー通り、プルートは相手と自分の前に2本ずつ。なーんだ分かってるじゃねえかお前、つまり4本を2人で割って2本ずつってことだわな。そっかーそうだね、スルメ噛みながら鉛筆グー握りで( )に2を書き込むプルート、問い一はこれでよし。

「あれサターン、今日休肝日じゃなかったの」

 と傍らに現れたのはこれも同役のジュピター、サターンは返答の代わりにプルートにスルメ9本をすかさず渡す。さあ俺とお前とこいつで9本はどう分ける。ちょっと小首を捻り、すぐ各々の前に3本ずつを配るネコ坊主、サターンはジュピターの分を彼に握らせる。堅いこと言うなって。あーあ仕方ないな。無言のアイコンタクトで今日のところは懐柔されておくジュピター、根回しはこれでよし。

「……何をやっとるんだ、一体」

 のっそりと現れたのはマーキュリー、ついでとばかりに今度はスルメ8本を渡すサターン。さて俺たち4人で8本を分けたいんだが? 受けたプルート、ちらりと全員に目をやり、サターン・ジュピター・自分の眼前に2本ずつ、そして残りの2本に目を落とし、さっと自分の口に放り込む。この猫がーッ、瞬時に激昂するマーキュリーを必死でなだめるジュピター。あー言うんじゃなかった、思わぬ失態に肩を落とすサターン。と、その背後に人影。

「……なら、このスルメ全部を我々5人で分けるにはどうする?」

 涼やかな声に一同思わず背筋まで凍結。振り向かずとも声で知れる、彼らが上官アースがそこにいた。プルート、スルメの袋と全員の顔を見比べるや、ためらいもなくその全てを上官に手渡す。

「うむ、大変よろしい」

 袋を受け取って満足げな微笑でプルートの頭をなで、ついでに酒を一升瓶ごと持って悠然と立ち去る上官、呆然と見送る部下一同。




(了)

 1 + 1 もボスが3と言えば3。

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