:: 猫寿司

 時は師走の某寿司屋、ご多分に漏れず忘年会真っ盛りの我らがルーラーズ+サンゴッドご一行様。

「サバ」

 の唐突な一言に傍らを見るウラノスとネプチューン、見ると彼らの間にちょこなんと座るプルートの手には例の湯のみ。マグロ、タイ、ヒラメ、カツオ、そんな視線に気づいてか気づかずか、ルビなし魚漢字を読み上げる猫。ほおお凄いな、あらぁ偉いわあ。チビ助の思わぬ特技に感嘆の声を上げる二人。逆サイドのマース・サンゴッドはポカーンと猫を凝視、サターンも湯のみを手の中でひねり回しつつええとイワシ、アジ、ありゃ結構危ないな俺。そしてそんな光景にそっぽ向いてただ寿司食い続けるマーキュリー、気づかず寿司食い続けるビーナス。その横で上官アースは首をひねりつつ傍らのジュピターにささやいて曰くおい、あいつ……。返すジュピターも怪訝そうに、ええ、確かあいうえおも読めないのに。

「じゃ……じゃあ、これは何と読む?」

 腑に落ちぬ上官、何やら書き付けプルートに示した箸袋には墨痕あざやかに「あ」。ちょっと小首かしげて後、即座に答えを返す猫。

「ぺ」

 ぺ……!?どっから?今さら貴公子?思わぬ角度からのカウンターに一同とっさにパニック、アース瞬時に沸騰。

「こ……これは『あ』だ、『あ』!昨日あれほどやったろうがッ」
「ち、違うもん!ぺだもん!」

 何故か何のためらいもなく言い張る猫、それは上官の火に油を注ぐ。「あ」だろうがッ、どこをどう見ても!

「やだーっ、ぺがいい、ぺがいいーッ」

 好みの問題かーッ、ついにアースの怒声が悲鳴の様相を帯びた。ボ、ボス落ち着いて、傍らのジュピターが抑えにかかるのをニヤニヤ眺めるサターン。そんな光景を尻目にふたたび湯のみを読み始めるプルート。は、腹立たしい、何だったんだ昨日の苦労は。頭を抱えるアースに聞こえないようマーキュリーがぼそり、どうせそんなこったろうと思った。しかしなお諦めきれないか、上官はさきほどの「あ」を再び掲げる。

「プ……プルート、これは何だ」

 再び小首をかしげた後に猫、ためらいもなく返答。

「み"」

 だから「あ」だろうがッ、もはや泣き声のような悲鳴を上げるアースの横で、おい待てよ今のどうやって発音したんだ、とんでもない事に気づいてしまったジュピターとマース。み?いや違うな、み……やっぱり駄目だ、人智を超えた発音練習にかくて二人は突入した。フン馬鹿馬鹿しい、とばかりその間に寿司を掻っ攫うマーキュリー。オット、と寿司食いに参加するサターン。と……とりあえずお勘定、サンゴッドが事態の収束を図るその横で当の猫は漢字読みコンプリート達成。





(了)

 良いお年を。もう2009年も半ばですが。

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