星から戻ってきた彼らを、ナンバーズたちは元通りに迎えた。
疲れているだろうからと業務は代わり、食事も用意したが、後は普段と変わらぬ一日だった。
やがて夜の帳が下り、誰もがその日の終わりを静かに迎えていた頃。
宇宙ロボットたちもまた、夜空を見上げていた。冬晴れとあって冴え冴えとした星の空である。
「どっちかな、僕たちの星」
ビーナスがぽつりと言った。
「方角的にはあっちの方だろうなあ」
サターンが南東を指差した。
「どれだろ。たぶん見えてるよね」
「たぶんな。千光年向こうってらしいから、近いんだか遠いんだか」
「千光年?」
「ああ。ワイリー博士が教えて下すったんだが、光の速さで千年かかる距離だと」
「つまり?」
「つまり、今俺たちの見てるあの光は、千年前の……」
そこで、サターンの声が止まった。
ビーナス始め、聞くともなしにサターンの話を聞いていた一同が思わずそちらを向くと、サターンの表情が驚愕に固まっていた。とんでもない物でも見たような顔だった。
「おい、どうした」
後片付けで部屋に寄っていたメタルマンが声をかけると、サターンはかすれた声でつぶやいた。
「千年前……そうだ、今、俺たちは千年前のあの星を見てるんだッ」
瞬間、誰もが言葉を失くした。
誰もが気づいたのだ。
千年前。あの星が滅んだ、ちょうどその時だ。
わあッとマースが大声を上げた。そのまま窓枠を乗り越え、庭に躍り出る。突き動かされるように他の者も続いた。叫ぶ者、立ち尽くす者、のたうつ者、何かを訴える者。みな狂ったように我を忘れていた。
それとは逆方向にジュピターが走った。押入れに駆け込み、耳をふさいで根限りわめいた。
プルートは部屋から逃げ出した。あの日のように別館を駆け出し、本館の廊下を駆け抜け、いっさんに走った。
別館の騒ぎはすぐに本館にも伝わった。何事かと飛び出してきた仲間たちに、メタルマンはごく短く事情を伝えた。それで充分だった。
* * *
本館一隅の部屋……プルートの駆け込んだ部屋で、シャドーマン、スターマン、サンゴッドも別館の大声を聞いていた。
こちらは誰も、何も言わなかった。
サンゴッドが机を拳で叩いた。うつむいたその表情は分からないが、その音は幾度も、幾度も続いた。
プルートがその足元に座った。スターマンもシャドーマンも、席を外そうとはしない。
四人は強く固まったままその場を離れなかった。
* * *
別館で叫ぶ者たち、本館で黙る者たち。何をしたいのか、おのおの自分でも判然としなかった。だが、そうするしかなかった。そうしないことには耐えられなかった。そうすることであの星を、亡くしたものたちを思っていた。
地球の者たちもじっとそれを見、聞いていた。そうすることで彼らの新しい仲間たちを、昔からの家族たちを思っていた。
誰もがみなそうやって、他の誰ものことをただただ思った。
(了)