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:: プロローグ1

 崩れた城壁に足を乗せると、足元の森は遥かに続いていた。
 うっそうと茂る熱帯雨林。久々に目にするそれは想像以上に広く、また底知れず深く感じられる。
 こんなところに自分たちはいたのだ。その思いは感慨より圧倒に近く、彼らにぐっとのしかかった。それほどにたくましく、したたかな命の広がりだった。
 ――そして、かつては皆がここにいた。
 千年の昔に栄華を誇った人々の痕跡は、もはやないに等しい。波間に辛うじて覗く岩のようにぽつぽつと見える遺跡がなければ、そこに文明の存在を信じる者はないだろう。
 風にそよぐ木々やら時々は生き物の声やら、音は絶えず聞こえるくせに、その場にはっきりと存在している沈黙が彼らには分かった。
 それでも勇を振るって一歩、二歩と歩き出した彼らは、しかし誰からともなく足を止めた。誰もが無言だったが、抱く思いは変わらないはずだった。

 ――なぜ、自分は生き残ってしまったのだろう。

 眼下の樹海は答えてはくれない。それは一切を飲み込み、厳然とそこに存在している。
 その前にあって、彼らはただ途方にくれて立ち尽くす小さな影だった。

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