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:: エピローグ2

 星から戻ってきた彼らを、ナンバーズたちは元通りに迎えた。
 疲れているだろうからと業務は代わり、食事も用意したが、後は普段と変わらぬ一日だった。
 やがて夜の帳が下り、誰もがその日の終わりを静かに迎えていた頃。
 宇宙ロボットたちもまた、夜空を見上げていた。冬晴れとあって冴え冴えとした星の空である。
「どっちかな、僕たちの星」
 ビーナスがぽつりと言った。
「方角的にはあっちの方だろうなあ」
 サターンが南東を指差した。
「どれだろ。たぶん見えてるよね」
「たぶんな。千光年向こうってらしいから、近いんだか遠いんだか」
「千光年?」
「ああ。ワイリー博士が教えて下すったんだが、光の速さで千年かかる距離だと」
「つまり?」
「つまり、今俺たちの見てるあの光は、千年前の……」
 そこで、サターンの声が止まった。
 ビーナス始め、聞くともなしにサターンの話を聞いていた一同が思わずそちらを向くと、サターンの表情が驚愕に固まっていた。とんでもない物でも見たような顔だった。 
「おい、どうした」
 後片付けで部屋に寄っていたメタルマンが声をかけると、サターンはかすれた声でつぶやいた。

「千年前……そうだ、今、俺たちは千年前のあの星を見てるんだッ」

 瞬間、誰もが言葉を失くした。
 誰もが気づいたのだ。
 千年前。あの星が滅んだ、ちょうどその時だ。

 わあッとマースが大声を上げた。そのまま窓枠を乗り越え、庭に躍り出る。突き動かされるように他の者も続いた。叫ぶ者、立ち尽くす者、のたうつ者、何かを訴える者。みな狂ったように我を忘れていた。
 それとは逆方向にジュピターが走った。押入れに駆け込み、耳をふさいで根限りわめいた。
 プルートは部屋から逃げ出した。あの日のように別館を駆け出し、本館の廊下を駆け抜け、いっさんに走った。
 別館の騒ぎはすぐに本館にも伝わった。何事かと飛び出してきた仲間たちに、メタルマンはごく短く事情を伝えた。それで充分だった。

 *  *  *

 本館一隅の部屋……プルートの駆け込んだ部屋で、シャドーマン、スターマン、サンゴッドも別館の大声を聞いていた。
 こちらは誰も、何も言わなかった。
 サンゴッドが机を拳で叩いた。うつむいたその表情は分からないが、その音は幾度も、幾度も続いた。
 プルートがその足元に座った。スターマンもシャドーマンも、席を外そうとはしない。
 四人は強く固まったままその場を離れなかった。

 *  *  *

 別館で叫ぶ者たち、本館で黙る者たち。何をしたいのか、おのおの自分でも判然としなかった。だが、そうするしかなかった。そうしないことには耐えられなかった。そうすることであの星を、亡くしたものたちを思っていた。
 地球の者たちもじっとそれを見、聞いていた。そうすることで彼らの新しい仲間たちを、昔からの家族たちを思っていた。

 誰もがみなそうやって、他の誰ものことをただただ思った。


(了)

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